骨粗鬆症・リウマチ
骨粗鬆症とは
- 加齢で骨量が減少し、骨が折れやすくなる
- 老化やカルシウム不足をはじめ、運動不足、喫煙や飲酒、閉経(女性ホルモンの減少)などが原因となって骨量(骨の質量、カルシウムやコラーゲンなど)が減少し、鬆(す)が入ったように骨がスカスカになり、脆くなる疾患を骨粗鬆症と言います。発症すると、ちょっとした衝撃でも骨が折れるようになるほか、高齢者特有の症状でもあるので、要介護状態を招きやすくなります。
- 骨量の減少に自覚症状はない
- 骨量は、20~30歳頃の若い時期をピークに、加齢と共に減少していきます。この骨量、ひいては骨密度(単位体積あたりの骨量)が減少することで骨粗鬆症の状態になるのです。骨量の減少による自覚症状は全くないので、骨折したときに気づく場合がほとんどです。骨折箇所は背骨が最も多く、次いで手首となっています。さらに70歳を過ぎると大腿骨近位部(足の付け根の骨)を骨折しやすくなります。この部位は、身体を支えるうえで大変重要な役割を果たしていますので、骨折をしてしまうと寝たきりの状態になることもあります。
- 女性は50歳前に一度検査を
- なお、骨粗鬆症患者の8割ほどが女性であり、とくに女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降にとりわけ多く見られます。女性は、50歳になる前に一度、骨粗鬆症の検査をお受けになるよう、お勧めします。このほか、偏食や極端なダイエット、喫煙や過ぎた飲酒なども骨粗しょう症の原因と考えられており、若い女性の骨粗しょう症も問題視されるようになっています。
骨粗鬆症の検査について
当クリニックでは骨粗鬆症の検査を行っています。検査の方法は、骨密度検査、骨代謝マーカーの検査、X線検査、身長測定などです。それぞれの検査内容の詳細は下記の通り。
- 骨密度検査
- 「骨密度」という骨の強さを判定する尺度を用いて、体積あたりの骨の質量を測定する検査です。測定の際は、全身型の骨密度測定装置(DXA)を使い、骨密度の測定(DXA法)を行います。DXA法(dual-energy X-ray absorddtiometry:二重エネルギーX線吸収測定法)とは、高低2種類のX線を測定部位に照射することで、その透過度をコンピュータで解析し、骨量を調べる方法です。この方法では骨量を単位面積で割った値で算出し、「骨密度」として表します。測定する骨は、主に腰椎(腰の骨)、大腿骨頸部(太ももの付け根部分の骨)などです。短い時間で済むうえ誤差が小さく、放射線の被爆量も少ないため、安全性に優れるというメリットがあります。
- 骨代謝マーカーの検査
- 血液や尿によって「骨代謝マーカー」を調べることにより、骨吸収と骨形成のバランスがわかります。このバランスが崩れると、骨は弱くなります。また、骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず骨折リスクが高くなっています。
- X線検査
- 骨粗鬆症と他の疾患との鑑別に必要な検査です。主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形が無いか、また「骨粗鬆症化」の有無(骨がスカスカな状態になっていないか)を目視で確認します。
- 身長測定
- 現在の身長が25歳当時の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを測定します。25歳時より4cm以上低くなっている場合は、それほど縮んでいない人と比べ、骨折する危険性が2倍以上高いという報告があります。骨粗鬆症かどうかを診断するうえでも重要度の高い検査です。
骨粗鬆症の治療法について
骨粗鬆症の発症には、老化や閉経以外にも食事・運動などの生活習慣が大きく関与しています。つまり、生活習慣病と同じように治療や予防については食事・運動療法が必要となります。また、骨粗鬆症の診断を受けた場合は、治療の中心は薬物療法となります。
- 食事療法
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食事療法では、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリング※に必要なビタミンD・Kなど治療や予防に必要な栄養素を摂取することに努めます。カルシウムは食品として700~800mg/日、ビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが推奨されています。これらの栄養素を積極的に摂りながら、バランスの良い食生活を送ることが大切です。
また、摂り過ぎに気をつけたい食品としては、アルコールやカフェイン、リン(スナック菓子やインスタント食品)などが挙げられます。度を過ぎた量のアルコールを摂取すると、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。カフェインも同じようにカルシウムの排泄を促します。このほか、リンを摂り過ぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまうので、骨密度の減少を招きます。※リモデリング:骨を壊す働きをする破骨細胞が骨を吸収する一方で、骨をつくる働きをする骨芽細胞が、破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨をつくる代謝作用。
栄養素を多く含む食品 カルシウム 牛乳、乳製品、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわし、ししゃも、大豆製品、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など たんぱく質 肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品 など ビタミンD あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、さんま、かれい、うなぎ、煮干し、干し椎茸、きくらげ など ビタミンK 納豆、抹茶、ブロッコリー、きゃべつ、サニーレタス、モロヘイヤ、しゅんぎく、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など - 運動療法
- 運動により体重負荷をかけることで骨は増加し、丈夫になります。さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えられるようになり、バランス感覚も向上して転倒防止にもつながります。骨量を増やすには、何も激しい有酸素運動をする必要はありません。散歩ほどの運動でも十分効果がありますので、できれば毎日、あるいは週に数回でも、とにかく長く続けることが大切です。
- 薬物療法
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骨粗鬆症の診断を受けますと、食事療法や運動療法に併せて薬物療法も開始することになります。
現在使われている薬には、主に下記のようなものがあります。骨の破壊を抑制する薬 ビスフォスフォネート製剤 骨吸収を抑制することによって骨形成を促進し、骨密度を増やします。骨粗しょう症の治療薬のなかでも有効性の高い薬で、現在、同治療の第一選択薬です。ビスフォスフォネートは腸で吸収され、すぐに骨へと届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制するのです。骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて、密度の高い骨ができてきます。 選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM) 骨に対しては、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨が壊れるのを抑制し、骨量を増加させます。 ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ) 骨の破壊を抑制する効果があり、骨を壊す細胞をできにくくします。すると骨量が増え、骨折リスクが減少します。この薬は、6カ月に1回の皮下注射で済みます(6カ月製剤)。 骨の材料を補う薬 カルシウム製剤 食事によるカルシウムの摂取不足、乳糖不耐症の方、胃腸の手術後などに用いられます。多くは、他剤と併用されます。 活性型ビタミンD3製剤 活性型ビタミンD3には、腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす働きがあります。また、骨形成も促進します。 ビタミンK2製剤 ビタミンK2は骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制することで骨代謝のバランスを整え、骨の質を改善します。 骨をつくる薬 副甲状腺ホルモン製剤(PTH) 骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。専用キットを用いて1日1回自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬があります。骨密度が著しく減少しているなど、骨折リスクの高い患者さんに用いられます。
リウマチとは
- 免疫の暴走で手足の関節が炎症する
- 本来であれば病原菌などの外敵を攻撃するはずの免疫が暴走してしまい、自分自身の身体を攻撃(自己免疫)することで、手足などの関節が腫れたり痛んだりする病気をリウマチ(関節リウマチ)と言います。炎症は関節だけではなく、目や肺などの全身に拡がることもあるほか、微熱や倦怠感、食欲不振などの症状も出ることがあります。さらに症状が進行していくと、骨や軟骨に小さな欠損部(骨びらん)ができたり、関節の破壊や変形をきたしたりするなど、日常生活に支障が出てきます。
- 発症時期は30~50代が多く、女性の割合が高い
- リウマチは膠原病のひとつです。発病するのは主に30~50代で、女性の患者様が男性の3~4倍多いのも特徴です。このほか、高校生以下の若年層や60歳を超えてから発病するという方もいます。発症には遺伝が関係するとも言われますが、リウマチの患者様が家族にいても、必ずしも発症するというわけではありません。
- 手足のしびれや痛みなどが初期症状
- なお、リウマチにはいくつかの初期症状があります。主な症状としては、朝方に手足の指関節がこわばる、関節のあちこちが痛む、手足のしびれや痛みがあるなどです。心当たりのある方は、一度リウマチの診断を受けることをお勧めします。当クリニックでもリウマチについての検査を行っています。
リウマチの検査について
- よく似た症状の病気は多いので慎重に検査
- リウマチと診断するには、問診をはじめ、血液検査、X線検査、関節エコー検査などの結果を照らし合わせたうえで、総合的に判断します。リウマチと似たような症状を起こす病気はいくつかありますので、検査は慎重に行います。似たような症状をいくつか挙げますと、変形性関節症は指の第一関節が硬く腫れ、中年過ぎの女性に多い病気ですが、リウマチではありません。また、男性の患者様が多い痛風は、足の親指などが腫れて痛みますが、ほかの関節に炎症の生じることが比較的少ないため、こちらはリウマチと区別ができます。
リウマチの治療法について
主なリウマチの治療法としては、薬物療法と手術療法があります。同じ療法でも、治療の仕方はそれぞれ異なります。
- 薬物療法
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- 進行を食い止めて関節破壊を防ぐのも可能に
- 薬物療法では、免疫抑制作用によってリウマチを治療する抗リウマチ薬のメトトレキサートなどを服用することや、関節破壊の抑制作用に優れる生物学的製剤などが登場したことで、炎症や痛みを抑えるだけでなく、病気の進行を食い止めて関節が破壊されるのを防ぐこともできるようになってきました。
最新のリウマチ治療では、リウマチの活動性をみながら、「寛解(かんかい)」すなわち病気の症状が一時的あるいは継続的に軽くなる、または見かけ上無くなった状態を目標に治療を進めています。どうしても寛解に至らない場合でも、ある程度、炎症がコントロールできる状態に近づけるようにします。
通常、3カ月以内にリウマチが十分コントロールできない場合は、薬を変更したり、薬を追加したりすることによって寛解、もしくはそれに近い状態を目指します。
治療によっていったん寛解に入った後は寛解を維持することが大切です。症状が良くなったからと言って、自分勝手に薬を減らしたり止めたりすると再発する可能性もありますので、必ず主治医の指示に従ってください。 - リハビリも併用して関節の機能障害を抑える
- 痛みや炎症を取る効果が期待できるのが薬物療法です。ただ、関節を動かさないでいると、固くこわばってしまうことがあります。そこで常に関節を動かすことで可動域を維持、拡大させるのが「リハビリテーション」です。毎日繰り返し、長期にわたって気長にリハビリを行えば、関節の機能障害が抑えられ、また痛みもやわらいできます。
- 手術療法
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- 人工関節で日常生活をサポート
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手術療法は、薬物療法やリハビリを行っても痛みが治まらない場合や、関節障害のために歩行が困難になるなど、日常生活に支障が生じている場合に行われます。近年、手術技術は進歩しており、また優れた人工関節も開発されています。現在、一般には以下のような手術療法が行われています。
滑膜切除術 関節を包む膜組織である滑膜(かつまく)が炎症を起こして腫れると、痛みの原因になります。滑膜切除術は、この滑膜を取り除くことで、痛みなどの症状を改善する方法です。術後は「腫れ」や「痛み」が明らかに改善するので、薬の量を減らすことも可能になります。 機能再建手術 リウマチの病状が進行して関節が破壊されてしまった場合は、関節を人工関節に入れ替える「機能再建手術」が行われます。人工関節は、膝関節や股関節をはじめ、肩、肘、手首ほか、あらゆる関節に対応するものが存在しています。